2010-03-14

藤沼貴『ロシア語ハンドブック』

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61.   ロシア語ハンドブック、藤沼貴、東洋書店、2007年

 ロシア語の勉強をずっと長く続けていくのだと考えている人には必携の書。第1部表現・文法編は初級文法の復習には最適であり、指示代名詞の説明には感心した。ただ体の用法が説明の部分が2ページというのは少なすぎる。小数点のところは「ロシアでは小数点にはカンマを用いる」と一言書いたほうが誤解がないと思う。「~するつもりである」という構文でхотетьをその意味で使うとあるのはおかしい。日本語だって、「~したくはないが、~するつもりである」という文例もある。意向の意味であれば、собиратьсяをメインにすべきではないかと思う。第2部のテーマ別語彙項目編は若干間違いもある。特に料理や食品に多い。編者が一人ではやむをえないと思う。一部紹介すると(カッコ内は当方が訂正したもの)は、浴衣(халат)、アルミサッシ(алюминиевый переплёт)、タイル(плитка)、サヤインゲン(стручковый фасоль)、サヤエンドウ(стручковый горох)、チェリー(черемухаではなくчерешня)、укропはディルまたはヒメウイキョウで、ウイキョウはфенхель、калинаはガマズミ、малинаはラズベリー、黒ビールの訳がない(тёмное пивоでсветлое пивоは普通のビールであり、ピルゼンビールだけとは限らない)、зубровка(зубрの好む草の茎が入っている)は薬草酒の一種だが総称ではない。薬草酒は настойка、果実酒はналивкаであり、конфетыはキャンディーではなくチョコ菓子、печеньеはビスケット、картошкаはチョコ風味のスポンジケーキ、пастилаはフルーツ羹というよりはやわらかいフルーツ落雁、院長はглавврач(директор больницыとは言わない)、「点滴する」はставить капельницуという。死亡記事はнекрологであろう。食物連鎖(пищевая цепь, цепь питания)、テンプラの訳がおかしい。в кляре(ころものついた)と入れないと意味が分からない。弁当はупакованный завтракではなくпереносной обедであろう。винегретはビーツの入ったポテトサラダであり、похлёбкаは具沢山スープであり、солянкаはレモン、オリーブ、酢漬けのキュウリの入ったスープであり、飛行機の車輪(脚部)はшассиであり、腕立て伏せはотжиманиеである。手風琴と記載あるが、普通は日本語ではアコーデオンというのではないか?またロシア語の改行規則が守られていないところがあるし、30か所近く誤植があるのは残念だ。次の版で訂正されることを願う。

ロシア人の日本語ガイド向けのテキスト

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113. *Из России с любовью(ロシアより愛をこめて), Попова, Япония Сегодня, 2005

 ロシア人の日本語ガイド向けのテキストだが、日本人のロシア語ガイドにも非常に役立つ。言葉と言うのは双方向のもので、ロシアのこと(ロシアの常識)を知らねば、ロシア人観光客の望むようなガイドはできないという意味で、またロシアのことも客観的によいところ、悪いところも紹介している画期的な参考書である。特に社会の底辺の人々について説明したところは非常によくまとまっていて興味深い。用語が単語別ではなく、フレーズあるいは文で、しかも露和で示されているのが非常に良く、ガイドや通訳にとっても使い勝手が良い。特にロシア正教の歴史や儀式の説明(特に葬儀)は分かりやすくてとても参考になる。ただ若干和訳が直訳的なところや間違いがある。例えばダイモンドファンドの用語集のいくつかの和訳などである。細かいことを言えば90ページの日本の震度の説明で7-балльная системаとあるが、これでは誤解を招く。確かに震度は0~7までだが、5と6に強弱があり、全部で10段階である。時事ロシア語に関心のある人には必携。題名だけ見ると007みたいな感じがするので、副題に「ロシア案内」などと入れればもっと売れるだろうと思う。

28.НО-05-62-514 ПОПОВА И.С. ИЗ РОССИИ С ЛЮБОВЬЮ. изд-во ЯПОНИЯ СЕГОДНЯ 2005 г. 448 стр. ISBN:5864791075 цена 61.40 Автор делает попытку обобщить свой многолетний опыт работы гидом-переводчиком японского языка и предоставить активно работающим и начинающим коллегам информацию, которая позволит отвечать на традиционные вопросы иностранных туристов и углубит контакт с туристической группой. К каждой из тем бесед прилагается короткий русско-японский словарь.http://www.mkniga.ru/prices/AH-2005-86.RZD